>黄金の魔女は、「魔法実現」を基盤とし、空想の貴金属を顕現させる魔力は、<br> 希薄な魔法全てに顕現の奇跡を与える。
(EP4.TIPS ベアトリーチェの称号)


前回の記事の続きです。

ベアトリーチェには「無限と黄金の魔女」という称号を持っており、前回解説した「無限の魔法」と合わせて「黄金の魔法」も彼女の魔法大系を構成する要素であると考えられます。
作中には「六軒島に眠る黄金」「黄金の魔法」「黄金の真実」等、数多くの「黄金」の語を冠するキーワードが存在します。
それらを関連させて「黄金の魔法」について考察し、さらに「無限の魔法」を組み合わせることで実現する魔法大系についてまとめます。
1.真里亞の薔薇の復活

作中で「黄金の魔法」という言葉が出てくるのはEP3が初出で、真里亞の薔薇を蘇らせるシーンです。

>瞼を固く閉じて、心の力を集中する真里亞の周りに、小さな黄金の蝶々たちが舞い始める。……それこそ、真里亞の持つ魔法の力の顕現なのか。
>「彷徨えし薔薇の魂よ。今一度集い、そしてその姿を思い出すがいい。……さぁさ、集えよ、思い出せよ…。」
>黄金の蝶たちは輝きを強め、数を増やし、そしてベアトリーチェが天高く指す、その指先に集まっていく…。
>それこそが、黄金の魔法の奇跡…。
(EP3)

この後、その場にはなかった「真里亞の薔薇」が復活するのですが、このシーンの愛の無い解釈、つまり魔法を信じないニンゲンの解釈では、ベアトリーチェが別の薔薇に「真里亞の薔薇」と同様の目印を付け、「真里亞の薔薇」であると信じさせるといったものになります。

EP8で「黄金の真実」「信じる心」と表現されたように、「黄金の魔法」「信じる心」によって実現する魔法……すなわち「魔法の結果である」と認められることで成立する魔法だと言えます。


2.黄金の魔力

ベアトリーチェは魔法を心から信じる真里亞のような人間だけでなく、六軒島の多くの人に存在を認められていました。それは六軒島に眠る黄金が産み出す魔力を由来とするものです。
なお、この「黄金」とは比喩でなく、金蔵の残した大量のインゴットのことです。
(余談ですが、物質としての「黄金」も人間社会で価値の高さを皆に信じられた結果、高価な存在となっている……と言うことができる点が興味深いです)

ベアトリーチェは金蔵が持っていた当主の座と黄金を受継いだことで「黄金の魔女」となりました。
この称号を得た結果、彼女は当主の座という立場の力で使用人達を協力者とし、また碑文殺人の儀式を行う際には黄金を用いた買収で親族を協力者とすることを可能にしました。
協力者が多ければ(本心から魔法を信じていなくとも)「ベアトリーチェは魔法の力を使う」という主張を受け入れさせることができ、それを主張する協力者が多ければ非協力者にもそれを信じさせる力が強まります。
その結果、ベアトリーチェが魔女として振る舞うことが出来る領域が拡大したのです。


3.無限と黄金の魔法大系

「無限の魔法」を自らの創り出したゲーム盤や内面世界の中で好き勝手に振る舞っても、それを「魔法」だと認識するものが他にいなければその力の及ぶ範囲は自分のみに留まります。
ですが、前述したように「黄金の魔法」の力を持つベアトリーチェはそれらの振る舞いを「魔法」として他者に行使することが可能です。
ここでEP4TIPSに書かれる魔女の定義を確認してみましょう。

>魔女の定義は曖昧だが、ニンゲンを基準に考えた場合、それを超えた力を持ち、自由に行使できるならば、その時点で魔女であるとする説が一般的。
>そして、それを自由に行使できる世界、あるいはカケラを、領地と呼ぶ。

(EP4.TIPS)

ベアトリーチェは「無限の魔法」「黄金の魔法」のふたつの力によって、無限の力を自由に行使する世界をゲーム盤の中に実現しています。これがすなわちベアトリーチェの「魔女の領地」です。

通常の魔女はニンゲンの世界より上位の階層に存在し、ニンゲンに対して魔法を自由に行使します。
一方、ベアトリーチェは人間界に存在し、それより下位であるゲーム盤の駒に対して魔法を自由に行使します。
このようにベアトリーチェの魔法大系は通常の魔女のスケールは一回り小さく、それが人間界で構成されているという特徴を持っています。
この構造は、ベアトリーチェが上位魔女ラムダデルタに「後見人」になってもらうことを願うという話に繋がります。


まとめ

ベアトリーチェの「黄金の魔法」他者に魔法を認めさせる力であり、それが「無限の魔法」と組み合わせられることで魔女の定義に示される「魔女の領地」を獲得しています。
そしてこの人間界におけるベアトリーチェ魔法大系の実現は、ラムダデルタに「後見人」となってもらう結果に繋がりました。
次回は締めくくりとして、「後見人」がどのような概念と意味を持つのかをまとめたいと思います。